今回は『ガリエオX』ディレクターさんからいただいた写真で、番組を振り返っていきます!
◇◇◇◇◇◇◇◇
バイオエアロゾルを追い求めて -近畿大学 牧教授が挑む大気微生物の謎-
空から地面の下まで、あらゆる場所で、屈託のない笑みで空気を集める不思議な人物がいる。その正体は、近畿大学の教授 牧 輝弥さん。
大気中をただようバイオエアロゾル。
目には見えないその存在を身近に感じることができる絶好のものがある?
「ここをほじればすぐに分かります」
「私の鼻クソを水で溶いてサンプルにしたものがこれになります。」
!!!
「いかにこの空気中に微生物がただよっているか、この鼻クソサンプルで分かるんです」
「これが鼻クソに含まれる微生物になります。」
「これだけ鼻クソの中に微生物が含まれているということは、それだけ僕が微生物を吸っているということになります。こんなにうじゃうじゃいるわけです。
鼻クソを食べるのはいい行為じゃないですね、これを見れば一目瞭然です。」
ーーー
牧さんの休日の趣味はランニング。
「汚い空気の時は鼻クソがどんどん大きくなって、今日みたいにきれいな空気の日はちょっと小さめという具合になります。」
目には見えなくとも私たちのまわりに存在する膨大な量の微生物たち。
それらはすべての地球上の生物にとって欠かせない存在でもあるといいます。
では、大気中をただよう微生物を調べることでいったい何が分かるのでしょうか。
「アレルギー源となる微生物が黄砂の中から見つかってくる、汚染大気PM2.5からも見つかってきます。そういう意味で健康被害への対策としてこのバイオエアロゾルの研究は役立っています。」
バイオエアロゾル研究は健康への影響を調べる以外にもう一つ重要な目的があります。
その目的とは、雲を作り出している微生物を調べること、らしいのですが…
「水蒸気が集まるだけでは雲にならないんです。水蒸気が集まってそこに小さい粒子が混入されることで水を集めて白い雲になります。その水粒子を集める成分としてバイオエアロゾルが注目されているんです。こういった森のバイオエアロゾルが上空に舞い上がっていって、白い雲になっている可能性があるんですよ。」
牧さんのバイオエアロゾル探求の旅は続きます。
ーーー
牧さんの休日の趣味はボクシング。
この日は特別に近畿大学ボクシング部監督の名城信男さんとミッド打ち練習。
牧さん褒められて嬉しそうです。
ーーー
観測へ向かう最中、学生が寝坊したようです。
(連絡を受けてスマホを操作しながら)
「怒っとかなあかんかな…。汗かきマークで送ったろ。」
上空1000メートルに漂う微生物を捕まえようというのです。
ヘリコプターに機材を持ち込み、セット完了。
いざ1000メートルの空へと旅立ちます。
ヘリコプターに開いた小さな穴からおよそ1000メートル上空のバイオエアロゾルを1時間半かけて採取していきます。
バイオエアロゾルを採取したフィルターを回収し…
早速採取したサンプルを調べるために、観測装置を大学へと持ち帰ります。
実は牧さんが使用している観測装置や実験道具はほとんどが手作りです。
ホームセンターでの買い物が何よりも楽しいひとときだそう。
「僕にとってはホームセンターはディズニーランドみたいなものです」
バイオエアロゾル研究からは黄砂がもたらす意外な側面が見えてきました。
上空をただよう黄砂には、実は納豆菌が付着していることがあります。
牧さんはその黄砂から納豆菌を分離、培養し、なんと納豆食品を開発しているというのです。
ーーー
牧さんは上空だけでなく、地底のバイオエアロゾルについても研究しています。
天然記念物である乳白色の鍾乳石の一部が緑色に変色する現象が今、秋芳洞内で起こっています。
省エネのため洞窟内の照明をLEDに変えたところ、その光の波長を好む微生物が繁殖し緑化が進んだと考えられています。
牧さんは緑化の原因となっている微生物とそのメカニズムを調べています。
現在の調査の結果、原因となっている微生物はシアノバクテリアの一種と考えられています。
しかし、緑化が広がるメカニズムはまだ謎だらけ。
今後解析が進めば、バイオエアロゾル研究にさらなる進展が期待できると牧さんは考えています。
「ゆくゆくは遺跡とか天然物の保全にかかわってくる研究ではないかな、と考えています」
ーーー
地面の下から空まで。
様々な場所でバイオエアロゾルを採取している、ちょっと変わった研究者、牧教授。
牧さんに今後の目標を聞いてみると、
「ぶれることなく定年までこのバイオエアロゾル研究をやっていこうと思っています。」
目には見えなくとも大気をただよう多数のバイオエアロゾル。
牧さんが解き明かす今後の研究に期待です!
◇◇◇◇◇◇◇◇
冒頭で出てきた「鼻クソサンプル」については著書のまえがきにも詳しく書かれていますのでぜひそちらも読んでみてください。