
=== 牧教授レポート ===

春のシンガポール滞在中にシンガポール南洋理科大を訪問し、バイオエアロゾルをショットガンメタゲノムで解析する実験室を見学した。
研究室は、TSIで働いている内田さんに案内してもらった。
彼はシンガポール南洋理科大でバイオエアロゾルのショットガンメタゲノム解析を立ち上げ、いくつかの有名雑誌に論文を発表していた。解析方法や研究室の状況に詳しかったので見学案内を買ってくれたわけだ。その折、11月にAAC2024がマレーシアで開催され、自身も参加すると教えてくれた。
参加するか悩んでいたが、帰国して研究室のM2の田宮さんにAAC2024で発表してはどうかと伝えると、二つ返事で参加すると返答があった。
海外で発表するのに躊躇しがちな学生が多い中、珍しい。私も参加する気になり、折角なので口頭発表で申し込んでみた。
ちょうど大阪観測のモニタリングとメタゲノムを比較するデータ考察を深めたかったので、内容にも困らない。しかも、大阪のデータを自身で発表するのは初めてであり、近大でとったデータを初披露する場にもなりそうなので、やる気が出てきた。
マレーシアと聞いていたので、すっかりクアラルンプールで開催かと思っていたら、クチンというスマトラ島にある町が開催地だった。

クアラルンプールから更に飛行機で2時間弱移動する必要がある。
クチンは、猫という意味があるらしく、街には猫の像がちらほらあり、猫も人懐っこくすり寄ってくる。
映画「猫の恩返し」のテーマ「風になる」が聞こえてきそうだ。



会場は、宿泊先のプルマンクチンホテルからバスで30分ほどで、大きな国際センターだった。

手続きするため会場に行くと、まず最初に内田さんに出会った。内田さんの声掛けがきっかけだったが、いきなり出会えるとは奇遇だ。
内田さんは、TSIのブースを担当しており、ほかのブースで展示されているバイオエアロゾルのサンプラーやモニタリング機器について教えてくれた。さすがシンガポール南洋理科大のエースだっただけはある。
基調講演や招待講演から研究発表が始まり、おもに汚染大気や地球温暖化に関連した発表が続く。
M2の田宮さんも、初めての国際学会とあり、フムフムと聞いている。いや、最初なので聞いているふりをしているだけかもしれない。いや、分かっていると帰国後に報告書を書かされると思っているかもしれないので、聞いているふりのふりをしているのかもしれない。
そんな感じで、発表が進行していき、我々の出番になった。

田宮さんは入口近くの聴衆が集まりそうな場所にポスターを掲示した。
内容は、「信貴山にフワフワと浮遊する微生物たちの雲をつくる能力も、旬の野菜のように季節変化するのだろうか」である。
私の知り合いの先生や、海外の研究者など、それなりに内容を聞いてもらえたようだ。
中には機関銃のように話す欧米系の方が来て、あまり話してくる内容がわからなかったとのことである。
おそらく一週間に10時間くらいはNOVAに通わなければならないと悟ってくれたと思う。

続いて私の発表である。
「バイオエアロゾルの自動モニタリング装置ウィブスは、本当に大気微生物を計っているのだろうか。計っているのならバクテロイデテスのような有機物粒子に付着している微生物を計っているのでないか」という内容について話した。

今回は、時間内に話を終わらすことができ、質疑の方も岸田元首相なみにまあまあ答えることができた。
しかし、いくつかの質問は聞き取れなかったので、「タイガー&バニー」に出てくるジェイク・マルチネスのように心を読む超能力を駆使して答えた。


画像引用:https://renote.net/articles/324455/page/2
その後、バイオエアロゾルのセッションでは、室内環境の気中微生物の話がいくつかあり、北京大のグループも黄砂によって運ばれる微生物の研究に着手しているのには驚いた。
ワレワレもウカウカしていられない。
学会を終え、フライトまでにまる一日時間があったので、ワニ園と洞窟を見学した。


クチンから車で 20 分の距離にあるジョンズ クロコダイル ファーム & 動物園は、マレーシア初で最大の飼育下繁殖クロコダイル ファームです。背の高い熱帯樹木、青々とした植物、地元の果樹の魅力的な背景に囲まれたこのユニークなファームでは、飼育下で繁殖した 2,000 匹以上のワニが飼育されています。(HPより引用)
ワニ園はジャングルを切り開いた中にあり、熱帯雨林を見回るのにもちょうどよかった。ただ、赤道よりやや南寄りなので、温帯の樹木も多く、ワニのにおいもぷーんとして、天王寺動物園の茶臼山を散歩している雰囲気に近かった。
ワニが泳ぐゲージはいくつもあり、ワニもこれでもかと言うくらい無数おり、まさに無限ワニ園といったところである。

中には、浮草が大発生している池もあり、そこからワニが這い出てくると、ミドリの巨体が動き回っているように見える。ミド、ミド、ミドリワニである。


洞窟は、照明植生を見るつもりであったが、驚くべきことに、洞窟には一切照明がなく、真っ暗だった。


入るときにヘッドライトが渡され、それを頼りに洞窟を回っていくのである。滑って転んでも自己責任なのである。なんと自然にやさしく、すがすがしいのだろう。
ここでは、蝙蝠も無数にいて無限蝙蝠だったのだが、照明がなく蝙蝠もこころなし、「風になる」を歌って喜んでいるように見えた。


よし、次は「蝙蝠の恩返し」だ。
(完)
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