筑波実験植物園での観測(牧輝弥)
実験植物園内の森林に繁茂するキノコは少ないものの,ヒラタケなど限られた種は,大きく傘を広げ,煙のごとく胞子を放出しているように感じられた。
ヒラタケは生えて直ぐは青白い透き通った色をしており,時間が経つと黄ばんでくる。
この青白い状態のものが美味しく,科学博物館の保坂先生の研究室でラーメンに入れて食べると極上だった。
しかし一方では,急激に気温が低下したためか,数日前に繁茂していたキノコが枯れ,焼夷弾で焼かれた兵士のごとく,黒くなった子実体のなれの果ても森の中に散在していた。
時には,キノコの柄の部分にはウジが湧いており,また別の真菌や細菌が生命力強く増殖していた。
キノコの分解物やそれを代謝する生命体が,干からび,粉状になれば,大気中を舞い,バイオエアロゾルとなっている可能性は高い。
よって,今回もバイオエアロゾルを沢山捕集できるのでないかと,四年生と一緒に大気観測に臨んだ。
森林の内部と樹上にサンプラーを設置し,更に上空はヘリコプターで旋回しながら,バイオエアロゾルを採取した。
今回は,富山県立大学の渡辺先生も参加され,バイオエアロゾルの蛍光を自動観測する最先端の測器をヘリコプターに搭載し,新しいデータ収集にも挑戦した。
ヘリコプター観測当日は晴天に恵まれ穏やかで,眼下には,所々,紅葉がモザイク状に見え,地上での紅葉観賞とはまた違った醍醐味を楽しめた。
また,畠や田んぼは収穫の時期を終え,地面が露出していた。
森林だけでなく,土壌からの微生物も空まで舞い上がっているのでないだろうか。
いろいろと思索を巡らし,高度500mで45分のサンプリングを完遂し,筑波空港に戻った。