環境微生物学研究室 - 近畿大学生命科学科

近畿大学東大阪キャンパスにある牧輝弥教授の環境微生物学研究室です。

秋芳洞での洞窟バイオエアロゾル観測

2021年3月22日-23日 秋芳洞(山口)での洞窟バイオエアロゾル観測

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観測装置をセッティングする新4年生

以下、牧教授のレポートです。

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日中に秋芳洞に入ると,突如,夜の山道に迷い込んだような気持ちになるが,上を見上げると大きな岸壁に覆われていて,洞窟だと改め認識するくらいの大きな空間が広がっていた。

空気の匂いも山道とは違い,洞窟臭が漂ってくる。

岩壁をよく観ると一面に白い粉のような膜に覆われおり,全てが微生物であり,主に放線菌と呼ばれる種類だ。

この放線菌が揮発物質を出して,洞窟臭を醸し出しているらしい。

雰囲気を味わっただけで,洞窟にはバイオエアロゾルが沢山漂っているのでないかとワクワクしてくる。

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早速,秋芳洞のメインスポットである黄金柱に辿りつくと,話しに聴いていたとおり,既に黄金色ではなく,やや緑がかっていた。

本来,白く黄色がかった色で表面がすべすべした感じの黄金色であるべきなのだが,照明光のため,葉緑体をもった微生物が光合成して柱の上で繁殖しているらしい。

この光合成生物は,大気を経由して飛んで来たのか,調べるのが,今回の本研究室の使命なのである。

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黄金柱あたりに加え洞内に4箇所バイオエアロゾルサンプラーを設置して,バイオエアロゾルの試料をサンプリングした。

昼ごろに開始して,翌日午前中に回収したため,充分量のバイオエアロゾルが捕集できていると期待できる。

あとは,今後の解析で,光合成微生物がどの程度含まれているか調べていく。

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実は今回の観測では,秋芳洞で新しく発見された空間「殊勝殿」にも案内していただいた。

案内といっても,観光用に整備されていないので,足場は礫が散在し,照明もない中を,ヘッドライトを頼りに,一歩一歩進んでいくので,まさに冒険である。

コースは,まずは100m程下り,川沿いを歩いて,新空間を100m登ると言った感じだ。

野外なら軽い運動で済むが,光はなく、瓦礫の急斜面なため,一歩一歩が真剣勝負であり,暗くて頂きが分からないため,何処がゴールか分からず,精神修養にもなる。

新空間の高台に立ったときは、息を切らせ,洞窟臭がする空気を一杯吸い込み,遠くに地底河川の激流の音を聞きながら,闇の中に居るという孤高感がこみ上げてきた。〔牧〕

 

秋芳洞とは?

山口県秋吉台山麓にある東洋屈指の大鍾乳洞です。(特別天然記念物

観光地としても人気があります。

akiyoshidai-park.com